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霞のむこうに立ち入る際には、決断が必要です。 読もうという強い意志を携帯した方はどうぞお進みください。                                                                  ※そこかしこにネタバレがあります。 ご注意ください。不穏な空気を感じ取った際にはリターンバックプリーズ!
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夜空の恋人たちの年に一度の逢瀬が叶う日ですが、残念ながら家の方はちょー雨です。
年々イベント事とは無縁になっていきますが、今年はちゃんと短冊を書きました~。
由良さんのイラスト展で(笑)
七夕さまに参加するなんて何時以来だろう。
季節物に対応できていると、なんだかまっとうな人生を送っているように感じるね。
(たとえ書いた願い事が”前髪”であっても)

無意味に浮かれたので、浮かれきってみました。

分かっている。己にそんな余裕は無いって事くらい・・・


久しぶりにコピック出したら液漏れがヒドイ・・・。
垂れた部分をごまかしたら色がありえないことになった・・・。
これがなきゃ笹飾りなんて書かなかった。
まあ。そんな時もある。
アナログは塗り直しが出来ないので、デジタルって便利なんだろうなって憧れるけどペイントしか扱えないのできっと一生アナログ人間。

あ、眼鏡書くの忘れたって今気づいた。
まあそんな時もある。

0dd18ba4.JPG


浮かれきった末の残骸↓



「タナバタ?」
語尾を不自然に持ち上げた声で、「?」を顔に貼り付けたミハエルが不思議そうに問い返す。
「今日、7月7日だろ」
ネクタイをはずしながら、ケイタイの液晶を向ける。
学校から帰宅し着替えながら何気なく目を落としたケイタイで、今日が7日と気がついた。
ああ七夕だったのか、とつぶやいた声をルームメイトは耳聡くひろったらしい。
デジタル表記の『07.07』
アルトが突き出したケイタイをじっと見つめたまま、ミハエルはさらに「?」を増やした。
「日本の節句のひとつ」
簡潔に答えてケイタイをしまうと、追ってきたミハエルの瞳がひとつまばたきをした。
どうやら聞きの体制らしい。
なぜこんなに興味を持ったのかは分からないが、任務の呼び出しも急ぎの仕事もない。まあいいか、と向かい合わせにベットへ腰掛ける。
「7月7日は”七夕祭”って言って、笹に願い事を書いた短冊を吊るして祝う風習があるんだよ。彦星と織姫が会う日だから”星祭り”って呼ぶこともある」
「ヒコボシとオリヒメ?」
「織姫はこと座のベガのことで、天帝の娘で機織に秀でたお姫さま。彦星はわし座のアルタイルで、牛飼いなんだ。ふたりは天の川で隔てられていて、七夕の夜に会うことが出来るっていう中国の古い逸話があるんだよ。」
へえ、と感嘆の声をこぼして、
「じゃあ恋人のお祭りなんだ」
ミハエルが目を細めて笑う。
恋人のお祭り?
七夕といえば『織姫と彦星』は定番だが、だからといって恋人同士を恵む所以があるわけではない。
老若男女誰でも参加するし、願い事だって勉学や健康などさまざまだ。
アルトとて七夕は女形修行のひとつで『乞巧デン』の習わしを模していただけだ。
設えられた祭壇では裁縫や習字の上達を祈ったり、音曲や芝居の上達を願うのがしきたりだった。
だが、兄弟子が自室にこっそりと用意してくれた笹の葉には母の身体の回復を願って短冊を吊るした。
毎年変わらず、年々寝込みがちになる母の無事だけを願った。
何度も切に祈ったその願いごとは、けっきょく叶うことはなかったのだけど。
アルトにとって七夕は決して良い思い出だけではなかった。
ましてや「七夕」と「恋人」が同在することなど皆無だ。
今度はアルトの顔に「?」が並ぶ。
眉を寄せて難しそうにうなるアルトの手をとって、ミハエルは聞いた。
「身分違いの恋人が堂々とデートできる日、ってことじゃないの?」
それまで自分が抱いていた七夕の印象とあまりにもギャップある解釈に、思わずアルトは吹き出した。
「あははっ、そ、そんな話聞いたことない・・・っ」
いったいどんな思考回路を辿ってそんな解釈に行き着いたのか。
学年主席のミハエルらしからぬ、ある意味とってもミハエルらしい七夕説話。
目じりに涙までためて笑うアルトを、ミハエルは不思議そうに見つめ返す。
「だいたい、織姫も彦星も働き者だったのに結婚したとたんに仕事をほっぽり出て怠けたりするから天帝の怒りを買って引き離されているんだぞ。それでも年に一度七夕の夜だけならって会うことを許されたのに、・・・”堂々と、デート”って・・・・・・っ」
せめてもう少し情緒に訴える言い回しはできなかったのか。
こらえきれない笑いで身体を折り曲げながら、アルトはベットに突っ伏した。
過ち故に科せられた切ない逢瀬も、癒えきらない悲しみの思い出も、そうと知らない人のひとことでどうして柔らかく瓦解してしまうのだろう。
こんな時、自分の中を占めるミハエルの存在を認識させられる。
他愛もないひとことで、ふと向けられる笑顔で、あたたかい両腕で、簡単に自分の心を捕らえてしまって離さない。
ああ、悔しいけど認めるよ。
俺はたぶん、自分で思っているよりもずっと、ミシェルのことが好きなんだ。



*********

「タナバタだったのか・・・・・・」
着替えの途中、もれ聞こえた耳慣れない単語に背後をうかがう。
アルトは握ったケイタイを見下ろして、だが視線はどこか遠くに向けられているようだった。
奇麗な横顔におとずれる、静謐。
宝石みたいな琥珀の瞳に一瞬影が揺らめいたように見えた。
何を想い馳せている?
何がそんな表情を呼ぶ?
醜い独占欲と知っていて、アルトの心を呼び戻すように声をかけた。
「タナバタ?」
はっとしたように顔をあげたアルトは、着替えを再開しながら「今日、7月7日だろ」平静を装ってケイタイを見せる。
もしかしてアルトの表情を変える何かがそこに映し出されているのかと期待したが、なんの変哲もない常通りの日付表示。
まあそうだよな、もしここに何か映っているのだとしたらアルトがあっさりと見せるはずがない。
気持ちはあけすけなくせに警戒心が強くて極度の意地っ張りなお姫さまは、総じて対人関係はひどく謙虚だ。
相手のテリトリーに踏み込まないかわりに、踏み込ませもしない。
それでも諦めきれずに鬱陶しがられても構ってからかって近づいて、距離を見極めながら少しづつアルトの心に触れ合えるよう。
ひとえに恋心のなせる所業だ。
簡単にはのぞけない「早乙女アルト」の、だから欠片でも拾えるのならばどんな話だって聞いてみたい。
仕方ないなという表情で向かいに座ったアルトは日本の風習だという「七夕」の話をしてくれた。
よどみなく語られるところから、それがアルトには慣れ親しんだ習わしなんだと知る。
過去の話をする時、アルトは自然と所作が奇麗になる。
普段は意識的に粗野な態度を装っているのだろう、きっとアルトにしてみればそれが「何もしていない」時なのだ。
あの静かな表情が「早乙女有人」に起因するものと気づき、少し、緊張が増す。
「織姫はこと座のベガのことで、天帝の娘で機織に秀でたお姫さま。彦星はわし座のアルタイルのことで、牛飼いなんだ」
お姫様と牛飼い?
身分違いの恋人ってことか?
膝の上できれいに揃えられた細い指先を見つめて、ふと思い出す。
まばゆい舞台の上で艶やかに微笑む美しい人。送迎車付きの梨園の御曹司。
2年前まで自分は彼に「身分違い」の恋をしていたのだ。
叶うはずのない片思い。
それが今、手を伸ばせば触れられる距離に彼がいる。
自分に聞かせるためにその声を紡いでくれる。
こうゆう奇跡が「たなばた」?
恋人のイベントなのかと問えば、静かだった表情はだんだんと眉がより何故だか険しくなってしまった。
まっすぐだった背を丸め、瞳の中には「?」がたくさん浮かんでいる。
アルトの表情だ。
「有人」と「アルト」。
本人はまだ思いきれていないようだが、そのどちらもが正しくアルトなのだと思う。
どちらが欠けてもいけない、その両面がアルトなのだ。
愛おしさに手をのばす。
白くたおやかで、でも生命の温みを放つ指先を握り締め、触れていることをごまかすように笑顔で問いかける。
「身分違いの恋人が堂々とデートできる日、ってことじゃないの?」
たとえば今の自分達みたいに。
そばに寄り添い、ささやきあって、触れ合って。
愛おしい気持ちを伝え合える日。
ダムが決壊したみたいに急に大爆笑したアルトは、涙目になりながらベットの上を転げまわりさんざん笑ってから、笑いのやまぬ声のままタネをあかした。
年に一度しか会えないなんて最初の話にはでてこなかっただろう、とつっこんでやりたかったが、いまだ涙の引かぬ顔で頬を上気させる表情がもったいなくてやめた。
代わりに、額にひとつキスを落として、
「1年に一度だけなんて待てないから、バルキリーで攫いに行くよ」
盛大な音をつけて目じりにもひとつキスを落とすと、俺の織姫様は耳の先まで真っ赤に染めてシーツの中に逃げ込んだ。






******************
逃げ込んだ先が白いシーツ(ミルキーウェイ)なのでフラグです(笑)
バレンタイン、クリスマスに比べると七夕って特に恋人のイベントって感じじゃないよね。
「キリストが生まれた日」よりもよほど恋人っぽい説話なのにね。
突発思いつきsssは推敲すらしないよ
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この世に生を受けて幾星霜、すでに人生の半数以上をオタクウィルスに侵されて生きてます。
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